◉智義信礼仁の関係性

 ここまで、冠位十二階の階位にならって、下位の徳目より順に〈智〉〈義〉〈信〉〈礼〉〈仁〉の章立てをして、十七条憲法を考察してきました。

 最初の〈智〉の章では、公人としてまず認識しておくべきことが、十七条を読み解く手がかりとして述べられていました。

 次の〈義〉の章では、公人としての基本的な注意事項が述べられ、つづく〈信〉の章では、そこでの心のあり方について述べられました。

 また〈礼〉の章では、公の場においては我執心を制御するための、ルールやマナーをわきまえることが大切であると述べられました。

 そして、これらの徳目のまとめとなる〈仁〉の章では、聖徳太子の描く理想の共同体のあり方について、述べられました。

 十七条憲法にある条文を、このような章立てに分類して解釈することで、五つの徳目の関係性を階梯的に解釈し、その全体像を把握することができたのではないかと思います。

 

 ここで改めて、これら〈仁〉〈礼〉〈信〉〈義〉〈智〉の五つの徳目の関係性を「一本の樹木」に譬えて、想い描いてみましょう。

 一本の《木》は〈仁〉という総体を表します。

 《木》を見てまず最初に目がいくのは、その樹木を覆っている《葉》です。《葉》に当たるのが〈智〉になります。まずは見るべきものを見て、知るべきことを知るということです。

 そしてその《葉》は《枝》に付いているものです。〈智〉という《葉》は、〈義〉という《枝》に付くものだということです。〈智〉と共にあるのが〈義〉のあるべき成り立ちです。識るべきことを識り、その上で、為すべきことを為しなさい、ということです。

 《葉と枝》に譬えられる〈智と義〉は、〈信〉という《幹》に備わってあるものです。識るべきことも、為すべきことも、真心あってのことであるべきだということです。

 そしてまた《葉と枝と幹》は、《根》に支えられてあるものです。〈智と義と信〉は〈礼〉という《根》に基づいてあるということです。真心を現す「かたち」を身につけ「こころ」を整えることを、根本としようということです。

 こうして《葉と枝と幹と根》の組み合わせによって成り立っているのが、一本の《木》です。〈智と義と信と礼〉がすべて備わって〈仁〉という徳が完成するということです。

 

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