十七条心得

十七条心得

浄土真宗の僧侶は、出家をして厳格な戒律を守りながら修行するのではなく、在家として世間にあって{ 南無阿弥陀仏 }のお念仏を称えながら、日々の生活を修行として勤めます。寺院に住まいして、それを管理運営するのが「 寺族(じぞく)」の役割ですが、世間にあってあれに迷いこれに迷いすることがあっても、指針となる確かな拠り所があれば、それを頼りとして、在家生活を仏道として生きていけるのではないかと思うのです。

  • はじめに

    日本の歴史が伝える偉人・聖徳太子を、浄土真宗の始祖・親鸞聖人は「和国の教主(日本のお釈迦さま)」と呼んで、尊敬されました。「聖徳太子」という人物が歴史上実在したかどうかを疑う人もいるようですが、私にとってその史実としての真偽は、それほどに重要なことではありません。私たちの国の最初の根本規範『十七条憲法』を読み込むことによって感じられるその人の「信念」にこそ、世間にあって理想的な人間としてありたい・・・

  • 第一条 和となるようにつとめましょう

    いろいろでひとつのこの世界です。他者に対して寛容になり、調和的な在り方を理想とし、平和を最も大切なこととして、むやみに対立したり争ったりしないことを基本としましょう。人にはそれぞれ自己中心的な我執の心があるので、自分の立場に固執して物事を見たり、自分の都合で敵味方の区別を分けたりして、全体のありさまや、事の成り行きを見通すことのできる人は、そう多くありません。それだから、家族や仕事の仲間や近隣に・・・

  • 第二条 仏教を大切にして保ちましょう

    まごころをこめて「三宝」をうやまいなさい。三宝とは「仏(真実の体現)」「法(真実の教え)」「僧(真実の仲間)」をいいます。そして「真実」とは、疑っても疑いようのない「真理」と「真心」をいいます。三宝こそが、生きとし生けるすべてのものにとっての「最後の拠り所」であり、あらゆる国々の人々が共感をもって了解し得る「究極の規範」であるといえます。どんな時代のどんな人も、仏によって説かれた教えを学び、社会・・・

  • 第三条 お寺の約束を守りましょう

    共同体の合意によって決められたことは、かならずそれを守りましょう。それぞれの人には、それぞれの立場の役割があります。それぞれが適切な役割にあってこそ、自然な流れの好循環が働き、みんながよりよくなれるのです。もしもそこでの役割や手順が不適切なものであれば、その共同体は崩壊していくだけです。共同体で定められたことは、重要な役職にあるものから率先して守るべきです。そして、そこで定められた約束ごとを、各・・・

  • 第四条 ありがとうおかげさまの心で

    慶集寺に関わる人々は、感謝と尊敬の心を根本としなければいけません。人間関係の根本は「ありがとう」「おかげさま」の心にあります。慶集寺の運営に携わる者にその心がなければ、それに関わる人々の間にも差し障りが生じ、寺院運営に問題を引き起す事にもなります。寺院を運営する立場の人々から率先して感謝と尊敬を心掛ければ、滞りなくその運営は執り行われるはずです。そしてその心が広く社会に通じれば、その共同体は自然・・・

  • 第五条 ひとのためにつとめましょう

    人の欲にはきりが無く、満足を知ることはなかなかできないものです。寺に住んでその仕事をする者は、生活を慎み、物欲を控え、ご門徒方からの様々な依頼に応えるようにしなければいけません。ご門徒方からの依頼や相談は、多岐に渡ってあるものです。仏事に関することだけでなく、精神面や生活面などにも様々な問題はあって、それが無くなるということはありません。けれども世間のありさまを見渡すと、寺院の仕事をする人々の中・・・

  • 第六条 思いやりの心でつきあいましょう

    世間で言われるものごとの善悪はその時代や社会の常識によるところが多く、必ずしも固定的で絶対的なものであるとはいえませんが、昔から教えられてきた「よいこと」そして「わるいこと」には、古来より現在にまで伝えられてきただけの経験則があります。因果応報。善因善果。悪因悪果。自業自得。自分の為した行いに応じて起きるその報いは「よいこと」も「わるいこと」も、他でもない自分が受け入れることになるのです。だから・・・

  • 第七条 それぞれの役割を成し遂げましょう

    社会や共同体において、人にはそれぞれに果たすべき役割があります。自分の役割に努め、他の役割を認め、混同しないようにしましょう。適切な人格者が責任のある役職にあるときには、自然と評価の声が起こり、ふさわしくない人物がその役職にあるときには、問題や混乱がしばしば起こるものです。事の大小にかかわらず、適任の人を得られたら、かならず治まっていきます。時代の流れが激しいときも穏やかなときも、適切な人格者が・・・

  • 第八条 時間を大切にして生きましょう

    ひとそれぞれに一生の時間は限られています。一年は三百六十五日。一日は二十四時間。一度限りの今です。寺院の仕事に就く者は、限られた時間を無駄に過ごしてはいけません。寺院に求められる仕事は、一日を通しても終えることのできないものです。有意義な時間の使い方と、いまここにある一期一会の出会いを、大切にして生きましょう。

  • 第九条 信心こそが大切です

    何事にも信心(まことのこころ)が大切です。真心こそがすべての大本であるからです。何ごとを為すにあたっても、まごころをもってするべきです。ものごとの動機となる心の在り方こそが、真の要となるからです。善いことも悪いことも、成功するのも失敗するのも、かならず誠実であるかどうかにかかっているのです。人々が互いに信頼し合い心を通わせながら事にあたるならば、どんなことでも成し遂げられないことはないはずです。・・・

  • 第十条 それぞれを認めて寛容であるように

    心の中の怒りをしずめ、表情に怒りをあらわさないようにして、他人が逆らったとしても激怒しないようにしましょう。人にはみなそれぞれの心があります。そしてその心には、おのおのに執着するところがあります。相手が正しいと考えることを自分は間違っていると考え、自分が正しいと考えることを相手は間違いだと主張してくることは、よくあることです。私がいつも賢いわけではないし、必ずしも相手が愚かなわけでもありません。・・・

  • 第十二条 私利私欲ではいけません

    寺院の役職に就いている者は、公私混同して寺院の法人会計に当たってはいけません。宗教法人である寺院の所有するものは、それに参加するすべての人々の共有財産であり、そこでの会計は公開を原則として、社会的に公正でなければいけません。寺務に就く者は仏の教えにつとめてそれを伝えるためにこそ、寺院における役割に伴う生活のための給与と住まいが与えられているのです。ご門徒方からのお布施やご懇志を、私利私欲で計るよ・・・

  • 第十三条 信頼しあって協働しましょう

    それぞれの役割における仕事内容を、互いに把握しておきましょう。病気になったり急な用事ができたりして、普段の仕事ができなくなることもあります。そんなときにもお互いにフォローし合えるよう、普段から備えておきましょう。自分の都合ばかり優先して、協働を拒むようなことがあってはいけません。効果的に連携して滞りなく仕事を進めていくために、報告と連絡と相談を心がけましょう。信頼し合えるコミュニケーションのもと・・・

  • 第十四条 嫉妬しないようにしましょう

    他者との関係のなかで、嫉妬心を持たないようにしましょう。人間には、自尊心とともに、競争心があります。他人が自分よりも優れていると思うときにはなかなかそれをよろこべないし、自分より勝っていると感じるときには、羨み妬むことさえある私たちです。人を羨み妬むと、相手もまたそれに反応した態度を返してきます。そうして嫉妬の憂いは、際限のないものになってしまいます。私たちはそれぞれに、優越感と劣等感の間を揺れ・・・

  • 第十五条 いろいろでひとつの世界を願って

    身勝手なふるまいを慎んで、みんなのために進んで行動することが、社会に生きる市民としての理想的な在り方です。大体にして自分勝手な気持ちで物事に関わっていると、周りの人から恨みや憎しみの心が起こってくるものです。恨みや憎しみの気持ちが起こると、心を一つにして行動を共にすることができなくなってしまいます。心を一つにして行動できなくなってしまうと、私的な感情のために関係がぎこちなくなって、みんなにとって・・・

  • 第十六条 みんなの生活があってこそです

    みんなで何かを計画してそれを行おうとするときにも、それぞれの生活の糧となる仕事やそれぞれの家庭の事情に配慮して、その時期や内容を決めていきましょう。組織のために人がいるのではなく、人のために組織はあるのです。一人一人の生活の安定があってこそ、共同体の安定や、社会の安定もあるのです。

  • 第十七条 話し合って決めましょう

    大事なことを独断で決めてしまってはいけません。かならず多くの人々とともに論議するべきです。それほどに重要ではない小さなことがらは、かならずしも多くの人びとに相談する必要はないでしょう。それぞれの役割に任せることも組織的な協働の上では大切です。けれども重大なことがらを決定するにあたっては、万が一の間違いがあるのではないかと、自分を疑ってみるべきです。多くの人々とともに議論をして是非の分別を究めてゆ・・・