浄土真宗の門信徒には、ご本尊として仰ぐ阿弥陀仏を、親しみを込めて「親さま」と呼ぶ習慣があります。浄土真宗の先人方は、人と人とを区別することなく、差別することなく、依枯贔屓することなく、等しく見守る仏の心を「真実の親心」と表現されました。

私はこのことを「根源的な生命エネルギー」と捉えています。生きとし生けるすべてのものが生じるための基盤としてある、すべての生命の根源を、先人方は「親さま」と自然に表現されたのだと考えているのです。

そのエネルギーは光であり、それはまた生命でもあり、人間の心を遥かに超えた、大いなる願いそのものでもあります。

すべてのものを分け隔てなく、一人一人をかけがえない自分の子供のように見守り、励まし、ただひたすらに願ってくださる。24時間365日休むこと無く、損得なく裏表なく、掛け値なしの真心で、ただひたすらに願っていてくださる、真実の親心です。

私たちが持つ自己中心的で限定的な願いではなく、無限の願い、解放された願い、満ち足りた願い、永遠の願い、真心そのものです。

すべての者を等しく願うということは、誰かと誰かを比べるのではなく、一人ひとりをそれぞれに、心から願うということです。

あなたはあなたのままで、誰とも比べることなく、かけがえない自分自身の人生を、精一杯に生き抜いてください。自分に出来ることを、自分のやるべきことを、誰の真似事でもなく、一生懸命つとめてください。めげないで、しょうげないで、胸を張って、元気でいてください。

そんな真心からの願いです。

 

 

浄土真宗のお寺の中央には木像の阿弥陀如来が安置してあります。ご門徒方のご自宅にある仏壇の中央にも、絵で描かれた阿弥陀如来が掛けられています。

この像に向かって合掌し、お念仏を称えるのが、浄土真宗の礼拝の基本的なスタイルです。

礼拝の対象となる阿弥陀如来の像を「方便法身尊像(ほうべんほっしんそんぞう)」といいます。嘘も方便などという言い方もありますが、仏教で言われる本来の「方便」という語の意味は「人々を真実の教えに導くために、仮にとられる便宜的な手段。手立て」のことをいいます。

方便に続く「法身尊像」は、「目に見えず言葉にも言い表すことのできないものが、尊い姿かたちをとって現れたもの」という意味です。

阿弥陀さまのお姿は「根源的な生命エネルギー」の現れです。「大慈悲心」のあることを「本願力」のあることを、私たちに知らしめようとされているお姿なのです。

ひかりといのちそのものが、願いをもってかたちとなったお姿です。

こころそのものには形がなく、目にも見えないものですが、確かにそれのあることを、私たちに伝えようとして眼前に現れる、阿弥陀如来のお姿です。

 

阿弥陀さまは、蓮の花の上に立っていらっしゃいます。蓮の花は、仏教の象徴です。泥の中に咲いて泥に濁らず、泥沼のような人間の世界にあって、美しい心の花を開かせる。

蓮の花は泥の中にあって、より一層美しさを際立たせます。

蓮の花の上の阿弥陀さまは、座るでもなく寝るでもなく、こちらに向かうようにして、立っていらっしゃいます。つま先立って、こちらの方にいまにも進み出そうとされています。

 

阿弥陀さまは、本来は目にも見えず、言葉にも言い表せない、心そのものです。けれどもその心は私たちに向けて、確かにその力のあることを伝えようとされています。

手の形は、それを伝えるためのサインです。

両手の親指と人差し指をちょっとつけて輪をつくり、右手は上にして、こちらの方に向けていらっしゃいます。

 

右掌のサインは「恐れることはありません 大丈夫 必ず救いとられることを 信じなさい」という印です。

 

下に向けられた左掌のサインは「どんな困難も乗り越えられます あなたはあなたのままで まかせなさい」という印です。

 

 

阿弥陀さまの背後からは、無限の光が放たれています。すべてのものを分け隔てなく照らす、永遠の願いの光です。円満なる願いの心は光となって、それはまた声となって、私たちのところに届いてきます。その声が「南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)」と、私の耳に聞こえてきます。

その声が私の心に響いてきたそのとき、私の口から現れてくるのがお念仏です。「なもあみだぶ」「なまんだぶ」「なんまんだぶ」の声です。称え方に決まりはありません。心で聞いたその声を、自分らしくそのままに、阿弥陀さまに向けてお返しします。

 

その声はきっと阿弥陀さまの耳に届くはずです。

 

「南無阿弥陀仏」

 

阿弥陀さまの声を聞き、その声をそのままに、自分の声にしてみます。

聞く耳を持たないというのではなく、よく耳を澄まして、まずはその声に耳を傾けてみましょう。

その声を、いまここから生き直すことのチャンスに出来るかどうかは、自分次第です。

 

Ⅲ⑦ ご恩に報いて >>>