急な知らせが例年になく続き、多忙を極めての分刻みで年末年始が過ぎ、大掃除もおせち料理もあったんだかなかったんだかのバタバタのなかで2013年を迎え、ふと気付けばもう大寒の候、寒中お見舞い申し上げます。

親鸞聖人750回大遠忌法要も円了し、本願寺派の最高法規である「宗法」が改正され、50年後の800回大遠忌に向けて、浄土真宗の新たな始まりの年となる今年2013年。

敗戦直後に生まれ、民主主義教育で育ち、バブル期を働き盛りで過ごした「団塊の世代」が65歳前後の定年期。高度経済成長が終焉し、安定成長に移行する時期に生まれ、就職氷河期に社会人となった「団塊ジュニア」が30代後半。 東京ディズニーランドが開園した1983年に生まれた日本人は、 もう30歳にもなる今年、2013年です。

一昨年、2011年3月11日の東日本大震災をきっかけとして、寺院に求められる社会的な役割はこれまでになく増しているように感じられますが、現実には全国のいたるところで、宗教法人が解散され「廃寺」となるケースが多く現れています。

10年後には寺院の数は、5分の1にも減少するという説まであります。

寺院に限らず、それを支える家や、地域や企業など、これまでに受け継がれてきた共同体のさまざまなところで、世代交代の難しさとその重要性が、益々高まっている時代です。

総人口の約75%を戦後生まれで占めるようになった現代の日本では、良いも悪いも多様な価値観が併存し、さまざまな生き方が個人の自由として認められるようになりました。日本の伝統的な家の行事であるお正月やお盆の過ごし方にしても、こうでなくてはいけないという決まり事は希薄化し、人それぞれ、家それぞれになっている状況が、顕在化しています。

個人の自由が重要視されるとともに、地域、親族、職場等の人間関係が大きく変容してきた現代社会では、これまでには一様な儀礼として執り行われてきたご葬儀もまた多様化し、個々の事情や状況に対応していく必要が、寺院にも求められるようになってきました。

数年前から地方にも顕著になってきた「家族葬」や「直葬」もまた、多様な葬儀の在り方の一例といえるでしょう。

東日本大震災以後、「 絆(きずな)」が時代を象徴する言葉になりました。

絆とは、離れがたくつながりあっている人間関係を意味しています。震災での悲痛な経験を通して、これまでには見過ごされがちだった、人と人との「 つながり 」の大切さが、改めて見直されているのだと思われます。

けれども同時に、多様な個人の生き方の自由を尊重することもまた大切なことであり、それには、さらに一歩踏み込んだ「つながり」の理解と認識が必要であるとも思われます。

仏教では、人と人とのつながりを意味する言葉として「 縁(えん)」が説かれます。

私たちは改めて、「 地縁(地域のつながり)」「 血縁(親族のつながり)」「 社縁(職場のつながり)」を見直すと同時に、人と人とがより深く、広くつながるための 「 仏縁(南無阿弥陀仏のつながり)」の可能性と、重要性を、再認識する必要があるように思われます。

鎌倉時代のように、大火、洪水、地震などの災害や疫病の流行に人々が苦しみ、政治や経済が混迷し、貴族社会から武家社会へと社会構造が大きく移り変わっていったような社会の大変動期には、浄土真宗、禅宗、日蓮宗などの「鎌倉新仏教」と呼ばれる宗派が次々と興って宗教運動が大きく展開し、仏教は民衆に革新的な精神的影響を与えたといいます。そうした中での仏教は、古い常識を打ち破り、次世代を切り開き、新しい価値観を生み出す力であったのだと、いわれています。

戦乱期を経て江戸期に至り、幕府による人民の統治が比較的安定を保つような時代になると、寺院は役所のように、僧侶は役人のように、仏教は社会の安定装置として体制を維持する役割を担うようになっていったのだと、いわれます。

歴史を眺めてみるならば、社会はいつも変動期と安定期を繰り返しながらあるものであり、時代の要請に応じて、仏教の果たす役割もまた、変化しながら存続していくもののようです。

明治、大正、昭和の戦争期を経て、戦後の経済成長期とその後を過ごしてきた日本はいま、
新しい変動の時期を迎えていると、多くの人々が感じています。

LINKAGE(リンケージ) = 連結・連関・連鎖・連動 = つながり・縁

Link( リンク・つながる )+ Age( エイジ・時代 )= LinkAge( リンクエイジ )

2052年1月16日 親鸞聖人800回大遠忌法要に向けて
2013年1月16日 慶集寺会所にて記す