王族としての何一つ不自由のない暮らしをしていたシッダルタが、なぜ妻子や家族への愛の絆を断ち切り、なぜ社会的地位や名誉や財産をふり捨ててまで、出家という人生の大転換を決意したのか。
それを知らせるためのエピソードとして「四門出遊」という物語が伝えられています。


ある日のこと、シッダルタは世間の様子を見に出かけようと従者を伴い東の門から城の外へ出ていきました。東の門を出て間もなく、白髪の老人がよろよろと杖にすがって歩いているのを見ました。 シッダルタは不快な思いになり、すぐに城へと引き返していきました。

そしてまたある日のこと、今度は南の門から城外へと出かけてみたところ、門を出てまもなくして、疫病にかかって倒れている酷い姿をした病人を目にしました。 シッダルタは不安な思いにかられて、今度もまた、すぐに城へと引き返していきました。

しばらくしてまたある日、今度は西の門から出かけたところ、亡くなった人の遺体を火葬しているところに出くわしました。 ショックを受けたシッダルタはがっくりとして、城へと戻っていきました。
城内でのシッダルタの生活では、まわりにいる人たちは皆、若く美しく健康で溌溂とした人たちばかりだったので、それまでには老人や病人や死人を見ることなどなかったのです。

そしてしばらくしたまたある日、残るひとつの北門から外へ出てみたところ、そこでシッダルタの前に現れたのが「出家者」だったのです。シッダルタはその威厳のある堂々とした姿に胸を打たれ、これこそが自分の進むべき道であると決意して城へと帰っていったのでした。


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