インドの雨期の間、お釈迦さまのお弟子たちは、みんなそろって僧院のなかにこもって
みんなで修行をする「 安居(あんご)」という期間を過ごすことになっていました。

そんな安居の最中、第六感の特殊能力を持っているとして「 神通第一 」といわれて
有名な「 目連尊者(もくれんそんじゃ・モッガラーナ)」という仏弟子が、
瞑想修行のなかで、すでに亡くなられた母親の姿を、観想されました。

するとそこには思ってもいなかった、身体を逆さ吊りにされて、喉を枯らし、腹を減らし、
飢えに苦しんでいる母の姿が、それはまさに「餓鬼道」におちてしまったかのような姿で、
ありありと目の前に浮かんで見えました。

目連尊者はそれに驚き、あわてて水や食べ物を差し出そうとしましたが、
ことごとく口に入る前に炎となって、母の口の中には入っていきませんでした。
そのことをお釈迦さまに話して、母を救い出す方法をたずねると、




「 安居の修行を終える最後の日に、すべての比丘( 僧侶 )に食べ物を施せば、
   母親の口にもその施しの一端が入ることだろう 」


と答えられました。


そこで目連尊者はお釈迦さまのいわれるとおりに、比丘のすべてに布施を行うと、
安居を終えた比丘たちは、飲んだり食べたり踊ったりして、大喜びしました。

すると、その喜びが餓鬼道に堕ちている者たちにも伝わっていき、
目連尊者の母の口にも入っていって、餓鬼道から無事に救われたということでした。

そうして雨期が明けて、安居を終えた目連尊者と比丘たちは、
屋外に出て、またそれぞれの修行へと、出かけていきました。




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