第一章の一 誕生・仏教の宣言

のちに「ブッダ(目覚めたる人)」としてその教えを広く世界に伝えることとなるゴータマ・シッダルタは、現在のネパール附近のヒマラヤ山脈に位置するカピラヴァスツという地域にあった「シャカ」という小さな種族の王シュッドーダナとその妃マーヤーとの間の一子として誕生されました。 聖母マーヤーは出産の時期が近づいたある日のこと、故郷に帰ってお産をするために旅に出られましたが、その道中のルンビニーという花園での休憩の時に突然産気がおとずれ、シッダルタを出産されたといわれています。それはときに、四月八日であったとも伝えられています。

ブッダの誕生に関しては「四方七歩の宣言」といわれる、ひとつの有名な伝説があります。
これは、ブッダは生まれると同時に七歩あゆみ出し、右手で天を左手で地を指差し、東西南北の四方に向かって「天上天下唯我独尊」と声に出されたというものです。
生まれたばかりの赤ん坊が突然歩き出すということも、突然言葉を話し出すということも、まず現実にはあり得ないことで、誰もそのままを信じる人などいないはずです。しかし長い年月を経て現代にいたるまで、国を越えて人から人へ、この話が語り継がれ伝えられてきたということは、仏教が伝えるべきある重要な「メッセージ」が、この物語に託されているからなのだと思われます。メッセージはこう読み解かれます。


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